① ユダヤの家庭に「決まったお小遣い」がない理由
日本では、小学1年生なら月100円、小学6年生なら2,000円のように、学年で決まったお小遣いを渡す家が多いと思います。お年玉もクリスマスも誕生日も、何かにつけて子どもに与えます。ユダヤの先生はこれを「日本は何かにつけあげすぎだ」と言いました。
親が子どもに無条件にあげるのは愛情だけ。ほかにあるとすれば、子どもが親から勝ち取るものだけだ。勝ち取る能力をつけさせてあげるのが、一番の優しさじゃないですか。ユダヤの先生の言葉
理由は単純です。決まったお小遣いは、何かを努力してもらうものではありません。何もしなくてもお金がもらえる状態が家の中にあると、努力する気が失せていきます。現実の社会では、寝てゲームをして遊んでいて報酬がもらえることはありません。何かを達成したから評価される。それなのに家の中だけ、無条件に何かがもらえる仕組みになっている。この矛盾を、ユダヤの家庭は作りません。
ユダヤの考え方では、すべての結果は習慣の連続の先にあります。歯を磨く習慣の人は虫歯にならず、磨かない習慣の人は虫歯になる。だから子どもにつけさせたいのは、努力したら報われる、自分から勝ち取りに行くという習慣です。お小遣いやプレゼントを無条件にもらう習慣は、その逆を教えてしまいます。
② 紙4枚で作るポイント制度:貢献・ご褒美・ペナルティ・集計
代わりに取り入れるのがポイント制度です。子どもが物をもらうとき、自分で頑張ったことがないと何ももらえない状態を作る仕組みで、言ってしまえば現実の社会と同じです。用意するのは紙4枚です。
- 1枚目:貢献。子ども自身に「親に対してどんなお手伝い(貢献)ができるか」を書かせます。たいていの子は、びっくりするほど書けません。人にどう貢献できるかを普段考えたことがないからです。それでいいので、まず書かせます。
- 2枚目:ご褒美。自分がやって嬉しいこと、欲しいものを書かせます。ゲーム、旅行、どこかへ遊びに行く。こちらは無限に書けます。いつも考えていることだからです。
- 3枚目:ペナルティ。人を叩かない、人をバカにしない、悪口を言わない、歯を磨かずに寝ない。こういう禁止事項です。これは子どもにではなく、親が書きます。
- 4枚目:集計。ポイントの増減を書き込む表です。やってくれたら、その場で記入します。紙でなくても、表にして押せば1ポイント足されるような形でも構いません。
次に、それぞれにポイントをつけます。貢献のポイントは、労力・時間・リスクに応じて高くなるように設定します。全部一律1ポイントにすると、楽なものしかやらなくなるからです。買い物に行ったら1ポイント、肩たたきは2ポイント、洗濯物を干すのを手伝ったら1ポイント、料理の手伝いは5ポイント、という具合です。ご褒美にも必要なポイントをつけます(動画の例はフルーツ100ポイント、旅行1,000ポイント)。ペナルティはポイントが減ります。これが嫌だから、ルールを守るようになります。
ポイントの配分は、親が決めてしまって構いません。子どもは楽をしたがるので、最初はこちらが誘導して作ってあげないと難しいからです。
③ ペナルティの決め方:年齢で変える、理不尽にしない
3枚目のペナルティは少し難しいところです。年齢によって中身が変わるからです。小さい子は「人を叩かない」と言われないと分からないことも多いですが、小学校高学年や中学生に「人を叩いてはいけません」とわざわざルール化するのは、社会規範として当たり前のことなので、ある意味レベルが低い。年齢に合わせてペナルティは変えていきます。
もう一つ、ペナルティは理不尽であってはいけません。たとえば「親の言うことを聞かなかった」をペナルティにすると、「親の言うことを聞くのが正しい」という教育になり、自分で考える力(自立思考)が磨かれません。親の言うことを聞かないからといって、悪い子に育つわけではないのです。作るルールはあくまで、その子がこのルールを守っていくことで、長期的に見て幸せになるだろうと思えるものにしてください。作るのは難しいところですが、ここは親の仕事です。
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④ 厳しすぎ・甘すぎの失敗例。正解は「少し厳しめ」
ポイント制度で一番大事なのはバランスです。講義では、うまくいかない両極端の例を話しています。
- 甘すぎる例:洗濯物を干したら10ポイント、10ポイントで5,000円までのおもちゃを買ってもらえる。これでは一撃で5,000円が手に入ってしまい、苦労がありません。
- 厳しすぎる例:お手伝い1つで1ポイント、おもちゃは1万ポイント。これは神光の娘の制度を娘の母親が設定したときの実例で、「一生終わらない」と驚いたそうです。一生届かない目標になると、これも良くありません。
神光自身の最初の設定は甘すぎた、と講義で認めています。親は子どもが可愛いので、どうしても甘やかす方向に寄ります。だから「ちょっと厳しい目線を持つ」くらいでちょうどいい。簡単すぎても難しすぎてもだめで、少し難しい目標にしてあげる感覚です。
途中修正は構いません。ただし、途中でハードルが上がるとやる気がなくなるので、厳しめから少し優しくする方向が普通です。値上げは難しく、値下げは受け入れられやすい、ということです。
大きなご褒美の扱いにもコツがあります。高額なパソコンのように、1万ポイント級のご褒美が出てきたとき、子どもはまず「これは無理だ」と思います。そのときに親は「本当にクリアしたら本当に買う。お金も用意してある」と、本気を見せます。知り合いの家庭では、先に買って見せたそうです。すると子どもは考え始めます。毎日のポイントをゲームやスマホに使わずに貯める(節約の習慣)、それでも届かなければ、もっとポイントがもらえる新しい貢献を自分で考える。講義で紹介された12〜13歳の子は、父親の缶ビールが空いた瞬間に、おつまみと一緒に次の1本を持ってくるサービスを自分で考え出したそうです。
⑤ 導入のコツ:鶴の一声で始めない。子どもの同意を取る
導入するときの注意点は2つです。
1つ目は、子どもと話し合って同意した上で始めること。多くの家庭は小さいころからポイント制度をやっていません。たとえば今お子さんが小学6年生で、お小遣いの規定がすでにある。そこに親の気持ち一つで「今日からポイント制にするから頑張ってね」と言うのは、子どもからすれば理不尽です。納得していないから無駄な反発が生まれ、ルールを守ろうという気持ちがなくなります。だから親の鶴の一声で導入せず、メリットとデメリットの両方をプレゼンして、子どもから「イエス」をもらいます。
伝え方は、ハードルを下げて「楽だよ」と言うのではなく、はっきり両方を伝えます。この制度を入れたら、お小遣いも、クリスマスや誕生日のプレゼントも、無条件にはもらえなくなる。その代わり、あなたが努力すればするほど、何でも手に入る。小学生で1万円を自分で稼ぐことは普通はできないけれど、この制度ならできるかもしれない。講義では「お小遣いをもらう習慣の子と、努力して勝ち取る習慣の子では、中学生・高校生になったときに差が生まれていると僕は思う」とも話しています。5歳くらいの子にも同じ言い方でよく、理解できなければ理解できるまで話す、とのことです。
2つ目は、何かを無条件に与えることをきっぱりやめること。神光が一番苦労したのはここだと動画で言っています。子どもは可愛いので、何でも買ってあげたくなる。それを「お小遣いが欲しい。だめです。無条件に与えることはしません」と言い切る勇気がいります。これをやらないとポイント制度は何の意味もなくなるので、必須です。夫婦で意見がずれているなら、「断ち切りましょう」という話し合いを先に一度してください。
⑥ 土台にあるルール:叱るのはルール違反のときだけ
ポイント制度は、ルールを守らせる仕組みの上に乗っています。ルールを守らせるには罰則が要る。だから子どもがルールを破ったら叱る。ただし叱るのはルール違反のときだけで、ルールの外では叱りません。テストで85点や90点を取った子に「なぜ100点じゃないの」と叱るのは理不尽です。ルール外で叱りすぎると、子どもはルールを守るかどうかではなく、親の機嫌がいいか悪いかを見るようになります。長期的に見て叱る必要があることが出てきたら、その場で叱らず、「次からルールを変えよう」と改定して、次から叱ります。叱る役と逃げ場になる役を親の間で分ける、という話も含めて、詳しくは ユダヤ式の叱り方 と ユダヤ式子育て にまとめています。
⑦ 導入後に起きる変化と、うちの子の場合
ポイント制度を続けると、子どもは「何をすれば人に喜んでもらえるか」を自分から考え始めます。ポイントが欲しいからです。神光の子も「こういうのをやってもいいですか」と自分から提案してくるようになったそうです。悪いことをすればペナルティがあるので、人を叩く、悪口を言うといったことも減り、社会規範を自然と守れるようになります。
そして何より、自分の力で何かを勝ち取れると分かるので、不平不満が減ります。何かが手に入らないとき、親が意地悪だとかケチだとかではなく、「自分の頑張りが足りない」と思えるようになる。何でも自分でやる選択肢がある、自分の能力で勝ち取れる。動画ではこれを「究極の自立思考」と呼んでいます。
神光の子は今年7歳で、動画の時点で運動が好きで、英語・ピアノ・習字を「もっと勉強したい」と自分から言うようになり、親は一度も「やりなさい」と強制したことがないそうです。ただし、これはうちの子の話で、同じ結果を約束するものではありません。
講義では、ポイント制度を「賢者と魚の話」と同じだと説明しています。魚(お小遣い)そのものを与えるのではなく、魚の釣り方(お小遣いをもらえる方法)を渡し、あとは自分で考えさせる。この話は 思春期の子育て で詳しく書いています。
- 【ユダヤ式】子育ての原理原則part② 子供に〇〇を持たせよ(YouTube「ゆだしん」)
- 【天才を生み出す】ユダヤ人から学ぶ子育ての原理原則(YouTube「ゆだしん」)
- 子育て 思春期編(講義)(YouTube「ユダヤアカデミー」)
数字について:人口0.2%(約1,580万人・2024年)はヘブライ大学 S. デラペルゴラ教授の推計、ノーベル賞受賞者の約2割は Jewish Virtual Library の受賞者一覧の集計です。動画で話している「世界の富の40%」「アカデミー賞の37%」などは集計によって数値に幅があるため、このサイトでは出典を確認できる数字だけを使っています。
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