話の全文
ある日、キツネがブドウ畑のそばを通りかかりました。あまりにおいしそうなブドウが垂れ下がっているので畑に入って取ろうとしましたが、ブドウ畑はしっかりと柵で囲まれていて、太ったキツネはその隙間を通れません。
そこでキツネは考えました。「野ウサギを捕まえるのをやめて何日も空腹を我慢すれば、痩せて柵の隙間を通れるようになるに違いない」。キツネは狩りをやめて巣の中に何日もこもり、空腹をじっと我慢しました。やっと柵の隙間を通れるくらいに痩せてきたので、フラフラになりながら巣穴から出て、柵をすり抜け、お目当てのブドウにありつきました。
そのブドウの新鮮なこと。あまりにおいしいので、キツネは夢中になって、もうこれ以上入らないというほど食べ続けました。なっていたブドウを全部食べ尽くして、はっと我に返ったキツネは、自分の腹がブドウでパンパンにふくれ上がり、入ってきた柵を通り抜けられなくなっていることに気づきました。
このままでは自分の巣に戻れない。そこでキツネは考えました。選択肢は2つ。A:苦しいけれど、食べたブドウを全部吐き出して、胃袋を元のペシャンコに戻す。B:猟師に見つかる危険を冒して柵の中にとどまり、ブドウの木の間に身を隠して、入ったときと同じように痩せるまで待つ。
さて、キツネはどちらを選択したでしょうか。
この話の本題は、答えではなく「ユダヤの親の問い方」
先に言っておくと、動画ではキツネがAとBのどちらを選んだかを明かしていません。この話は、リスクコントロール(出られなくなるまで取りに行ってしまわないか)がうまくできるかどうかの教訓として知られています。しかし僕が知ってほしいのはそこではありません。ユダヤの子どもたちが、この話を親からどう教えられるかです。
日本でこれを教えるなら、「Aがいいと思う人、手を挙げて」「Bがいいと思う人は?」「なんでAがいいと思うの?」と聞いて、それで終わりでしょう。ユダヤ人は「それでは何の意味もない」と言います。
ハブルータ:答えても「本当にそうなの?」と首を振る
ユダヤの学習法の一つにハブルータがあります。親が質問をして、子どもにちゃんと考えさせ、議論させる勉強法です。「AとB、どっちがいいと思う?」と親が聞く。子どもが「A」「B」と答えても、親は首を振って「本当にそうなの?」と聞き返す。僕もユダヤ人に、これを本当にたくさんやらされました。「本当にそうなの?」「それ、本当?」。そう聞かれ続けることで、AとB以外の、C・D・E・Fという、自分で考えた別の視点の答えを作らされるのです。
ユダヤの子どもたちが一番よく出す答えは、「お腹いっぱいになるまで食べなければいい。柵に入って腹二分目・三分目まで食べて出れば、ブドウも食べられて柵からも出られる」。「他の動物に取ってきてもらえば、自分は安全に実を手に入れられる」という答えも多い。こうやってC・Dの新しい考え方を自分で発見していくから、自分の中で答えを見つける力(自立思考)が強まっていきます。
問いは、そこで終わらない
ハブルータはこれで終わりません。親はさらに突っ込んだ質問をします。
- 「腹二分目・三分目なら、何日も我慢した甲斐があまりないよね。もっとお腹いっぱい食べられる方法を考えたほうがいいんじゃない?」
- 「他の動物に取ってきてもらうって、その動物が取りに行くメリットはあるの? 取ってきておいしいご飯を食べられたとして、それをキツネさんに渡すメリットは何?」
子どもは一生懸命考えます。「確かに、腹二分目じゃなくてお腹いっぱい食べられるほうがいい」「確かに、他の動物がキツネの代わりに行くメリットはない。どう交渉したら行ってもらえるんだろう」。本気で考えて、「自分は野ウサギを捕まえられる。肉が好きな動物なら、ブドウと喜んで交換してくれて、ウィンウィンの関係になれるんじゃないか」と考え出す。するとユダヤの親はさらに突っ込みます。「じゃあ、他のキツネがそれを見て真似するかもしれないよね。そのときはどうする?」。
こうして質問と議論を永遠に繰り返すことで、ユダヤの子どもたちは自立思考が磨かれ、賢くなっていきます。おそらく、こんな教育を日本の家庭や学校で受けたことはないはずです。だから自分で考える癖が身についていない人が多い。ユダヤ人は幼い頃からこの教育を受け続けているので、人生でとても重要な自立思考をはじめ、様々な知恵を習得できているのです。
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家で今夜からやる方法
- 話を読んで、聞く:「キツネはAとB、どっちを選んだと思う?」
- 答えが出ても、教えない:「本当にそうなの?」「他にはない?」。C・D・Eが出るまで待つ。
- 出た答えに、もう一段の質問をする:「それで何日も我慢した甲斐はある?」「相手(他の動物)のメリットは?」「真似されたらどうする?」
- 親が答えを言わない:答えを言った瞬間に、子どもはその先を考えなくなります。ヒントは方法だけ(「本で調べてみる?」)。
大人が自分のレベルアップのためにウィスダムを学ぶときも、この学習法を、レベルの高い人と一緒にやるのがおすすめです。
- ユダヤの子供が3歳から受ける英才教育3選【タルムード】(YouTube「ゆだしん」)
数字について:人口0.2%(約1,580万人・2024年)はヘブライ大学 S. デラペルゴラ教授の推計、ノーベル賞受賞者の約2割は Jewish Virtual Library の受賞者一覧の集計です。動画で話している「世界の富の40%」「アカデミー賞の37%」などは集計によって数値に幅があるため、このサイトでは出典を確認できる数字だけを使っています。
